【2024/8/15執筆】
入札参加資格に基づいて参加する各種入札制度にはいくつかの種類があります。
どのような制度があり、自社が何を目指いしていくかを考えた際にこれらの知識を得ておくのは有益です。ここでは入札制度の種類についてご説明します。
最も基本的な「一般競争入札」
「入札参加資格」を考えた際にまず最初に出てくる基本的な制度が「一般競争入札」です。
自治体が特段の条件などを設けずに工事案件を公表し、入札参加資格登録をしている建設業者がこれに対して応札する方式です。
予め付された条件はありませんので、純粋に一番低い金額を示して応札した建設業者が落札する結果となります。
ただし基本的に発注者(自治体)側で「最低制限価格」を設定していますので、それを下回る金額で応札した場合は失格になります。
このように価格よって決定されるため、中小の建設業者においても十分に参加できるところが魅力と言えます。
建設業者を予め選ぶ「指名競争入札」
指名競争入札は、発注者(自治体)の方から入札参加資格登録をしている建設業者のなかから一定の基準に基づいて「このような建設工事があるので入札に参加してください」と声をかけます。
発注者の側から応札業者を指名し、指名された業者が応札できるという制度です。
ただ、ご存じのように新規参入が阻害され、談合などが発生し得るのもこの指名競争入札です。
特定の業者との「随意契約」
自治体が、入札を行わずに特定の業者を選んで契約する制度です。これは「契約」と言った方が分かりやすいかもしれません。建設工事の高度な専門性や特殊な要件がある場合、最初から特定の1社と直接契約する「特命随意契約」があります。また、入札を行ったものの、応募者がいなかったり、入札が成立しなかった場合に、最低価格を提示した業者と契約する「不落随意契約」も存在します。 建設業者にとって、随意契約は必ず契約が成立するため利点がありますが、自ら積極的に狙えるものではないのが現実です。
一般競争の簡易版「見積もり合わせ」
見積もり合わせとは、小規模な工事や急ぎの工事に使われる入札方法で、簡易版の一般競争入札と考えると分かりやすいでしょう。発注者によって異なりますが、一般的には100万円前後までの工事で、例えば小学校や福祉センターの長など、出先機関の責任者が契約を決められる範囲の案件に使われます。小規模な工事を数多くこなすため、地元に根付いた中小建設業者が得意とする入札方式です。
希望制指名競争入札
希望制指名競争入札とは、通常の指名競争入札とは異なり、発注者が「この工事に参加したい業者は応募してください」と呼びかける方式です。工事に興味のある建設業者は、その呼びかけに応じて「参加したい」と意思を示します。その後、発注者は応募した業者の中から入札に参加する業者を選び、実際の入札が行われます。この方式は東京都内やその周辺の自治体で広く使われています。特に公共工事の実績がある業者は選ばれる可能性が高いため、有利な機会となるかもしれません。
総合評価方式
総合評価方式とは、価格だけでなく、他の要素も考慮して評価する入札方法です。この方法は、一般競争入札や指名競争入札の両方で使われます。従来の価格重視の入札とは異なり、例えば配置される技術者の資格や、過去に優良工事業者として表彰されたかどうか、省エネや環境保護への取り組み、技術的な提案などが評価の対象となります。入札金額とこれらの要素を点数化し、その合計点が最も高い業者が選ばれます。
たとえば、通常の入札では価格が最も安いA社が選ばれるとします。しかし、総合評価方式では、価格の点数に技術評価点を加えるため、技術評価が高いB社が最終的に選ばれることがあります。この方式は、価格だけに頼った入札で不健全な競争が起こるのを防ぐために導入されましたが、小規模な工事ではあまり使われていないのが現状です。
(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)
行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。
【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関
経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。
許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。