経営事項審査(経審)を受ける建設業者にとって、点数アップは常に気になるテーマです。令和8年(2026年)7月1日以降の経審から、新たに加点対象とされているのが「職人いきいき宣言」(建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度)です。
すでに申請受付は令和7年12月から始まっており、決算期によっては早めの対応が必要になります。ここでは、経審への影響を中心に、制度のしくみと注意点を整理します。

技能者を大切にする企業の自主宣言制度(職人いきいき宣言)について行政書士方波見が掲載されました。【建設新聞社様より提供】
経審への影響:W点5点加点
今回の経審改正のなかで最も大きな変更点が、この職人いきいき宣言による加点です。
宣言を行い、要件を満たしていると認められれば、社会性等の評価項目であるW点に5点が加算される見込みです。
同時に行われる改正には、災害対応力を評価する建設機械の評価拡充、社会保険加入に関する評価項目の削除もありますが、総合評定値へのインパクトという点では職人いきいき宣言による加点が最も大きいと見られています。
加点の対象になるにはどうすればよいか
加点を受けるための要件は、大きく3点です。
- 経審の審査基準日(=決算日)より前に宣言を完了していること
- 宣誓書・誓約書を提出していること
- 宣言した内容を実際に実行していること
このうち特に注意したいのが基準日との関係です。決算日を1日でも過ぎてから宣言しても、その事業年度の経審では加点されません。たとえば3月決算の会社であれば、3月末までに宣言を済ませておく必要があります。次の決算に向けて経審の点数を上げたい場合は、決算日から逆算して準備を進めることが欠かせません。
経営事項審査の概要については、こちらの経営事項審査ページをご覧ください。
そもそも職人いきいき宣言とは
制度の対象となるのは、技能者の処遇改善に前向きに取り組んでいる建設企業です。取り組み内容を「宣言」というかたちでまとめ、専用のポータルサイトで公表することで、発注者や求職者を含む業界全体から評価されやすくする仕組みになっています。
宣言企業になると、専用のシンボルマークが使用できるほか、次のようなメリットが期待できます。
- 取り組みが対外的に「見える化」され、信頼獲得につながる
- 発注者からの受注機会確保につながりやすくなる
- 求職者からの評価が上がり、人材確保がしやすくなる
つまり経審の加点はあくまで制度の一部であり、本質的には受注や採用の場面で選ばれる企業になるための仕組みという位置づけです。
宣言時に求められる取り組み内容
宣言にあたっては、次の3つの取り組みが柱になります。
- 適正な労務費の確保:見積書で労務費・材料費の内訳を明示し、下請から提出された見積内容を尊重すること
- CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用:技能者の就業履歴を蓄積できる体制を整えること
- 宣言企業との取引の優先的な検討:条件が同等であれば、宣言企業を取引先として優先的に考慮すること
これらは、単に書面上の約束ではなく、経審の基準日以降も継続して実行することが前提となっている点に注意が必要です。実施していない状態が続くと、虚偽申請とみなされるリスクもあります。
労務費の適正化が求められる背景
建設業界では従来、材料費に比べて労務費が削られやすい構造がありました。重層下請の中で、実際に現場を支える技能者まで十分な賃金が届かないケースも少なくありませんでした。
こうした課題を踏まえ、中央建設業審議会は職種別・地域別の標準的な労務費の水準を示す「労務費の基準」を公表しています。あくまで目安ではなく、最低限確保すべき水準に近いものとされ、公共工事だけでなく民間工事にも適用される点がポイントです。
今後、経審や許可業者としての信頼性を高めていくうえでは、なぜその見積金額になるのかを説明できる体制づくりが重要になってきます。
まとめ:早めの検討がカギ
職人いきいき宣言は、経審のW点5点加点に直結する制度である一方、宣言後の運用体制(見積書様式の見直し、CCUS対応、社内の責任者配置など)まで含めて対応が求められます。
決算日以前に宣言していなければ加点対象にならないため、次の経審で点数アップを狙うのであれば、決算スケジュールを踏まえた早めの準備が重要です。制度の詳細や申請手続きについてご不明な点があれば、是非ご相談ください。
(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。
【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関
経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。
許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。




