行政書士が解説「土木一式工事」

【2024/7/6更新】

建設業許可業種は現在「29業種」ありますが、土木一式工事は建築一式工事と並ぶ「一式工事」と呼ばれる総合的な工事です。

ここでは大規模な工事が多い「土木一式工事」について考えてみましょう。

建設業許可業種「土木一式工事」

「土木一式工事」の内容

建設業許可には2つの「一式工事」と呼ばれる工事があるのですが、土木一式工事はそのうちの1つです。では「一式工事」とは何かという話ですが、一式工事は総合的な企画、指導、調整のもとに工作物を建設する工事を言い、土木工事はつまり「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事」を言います。補修、改造又は解体する工事も含みます。

「土木工作物」は具体的にはダム、トンネル、橋梁、道路等が該当します。

尚、このような土木一式工事の性質上、通常は元請として引き受ける性質を持っており、土木一式工事の下請けという概念は考えにくいと言えます。

「土木一式工事」の具体例

土木一式工事の具体例を挙げてみましょう。工事の規模にもよりますが、一般的には以下のような工事が土木一式に該当すると言えます。

  • 道路工事
  • 空港工事
  • 道路/団地等造成工事
  • 送水/排水施設工事
  • 護岸工事
  • 砂防工事
  • 海岸工事
  • 防波堤工事
  • ダム工事
  • 貯水池/用水地建設工事
  • 公道下の下水道工事
  • 水路工事
  • かんがい排水工事
  • 港湾工事
  • 干拓工事
  • 地水鉄工事
  • 伏樋工事
  • 橋梁工事
  • 土木工作物の解体/除去工事 

「護岸工事」は堤防などを補強する工事を言います。川であれば河川の氾濫防止、海岸であれば高波等から内陸を守るための工事です。

「かんがい(灌漑)工事」は地下水や河川から水を引き、畑に水を供給するための工事を言います。用水路やスプリンクラー、ダム等の施設を設置します。

「橋梁工事」の橋梁とは川、海、渓谷等を渡るための構造物つまり「橋」のことで、橋を設置する工事が橋梁工事です。

「土木一式工事」の考え方

土木一式工事の中でも様々な解釈があります。

宅地造成工事を考えてみましょう。

宅地造成の中の切土や盛土、掘削や締め固め工事単体では「とび・土工・コンクリート工事」にあたります。

一方でそれらの工事に加えて擁壁の設置、道路の整備、上下水道の設置や舗装工事等を合わせて請け負い、これらを総合的に施工する場合は土木一式工事となります。

「プレストレストコンクリート(PC)」というものがあります。プレストレストコンクリートとは、荷重によってコンクリートに生ずる引張応力を打ち消す目的で、圧縮応力(プレストレス)を予めコンクリートに人工的に加えることによってひび割れを防止し、従来のコンクリート構造よりも、強度・耐久性に優れた構造材料です。

「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は「土木一式工事」に該当します。

上下水道に関する施設の建設工事においては「土木一式工事」、「管工事」及び「水道施設工事」の複数の工事に該当する場合があります。

その区分の考え方は、公道下等の下水道の配管工事及び下水処理場自体の敷地造成工事が「土木一式工事」であり、家屋その他の施設の敷地内の配管工事及び上水道等の配水小管を設置する工事が「管工事」であり、上水道等の取水、浄水、配水等の施設及び下水処理場内の処理設備を築造、設置する工事が「水道施設工事」と考えられます。

農業用水道、かんがい用排水施設等の建設工事は『水道施設工事』ではなく「土木一式工事」に該当します。

尚、土木一式工事の許可を取得しているからと言って他の土木系専門工事、例えば500万円以上のとび・土工・コンクリート工事や造園工事を請け負えるわけでないことに注意してください。

500万円以上の専門工事を請け負う場合はそれに該当する建設業許可が必要です。

「土木一式工事」の許可を取得するための専任技術者の主な資格

土木一式工事の許可を取得するために専任技術者に必要な主な資格は以下のとおりです。

いわゆる「セコカン」と呼ばれる施工管理技士が主となります。

資格を保有していない場合は、「関連する学歴+3~5年の土木一式工事に関する実務経験」、「土木一式工事の実務経験10年」で専任技術者となることができます。

とは言え、土木一式工事はこれまで見てきたように専門工事とは異なり一定規模以上の大規模な工事がほとんどです。実務経験で証明するのはなかなか難儀かしれません。

(許可申請の際に実務経験を証明する過去の資料が必要です。)

1級土木施工管理技士
2級土木施工管理技士
1級建設機械施工管理技士
2級建設機械施工管理技士

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

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