行政書士が解説「建設業許可の基礎中の基礎」

「建設業」を始める場合。

既に「建設業」を行っていて、これから拡大していこうとする場合。

はたして自社は「建設業許可」を取得する必要があるのか、許可を取得しなくても問題ないのか。

建設業許可を取得するにしてもどのような内容で取得すればいいのか。

自社の建設業許可の内容でどこまでのことができるのか。

これらの基礎知識を理解しておくことは大変重要です。

 建設業を始める・建設業を継続して経営する際のポイント

事業を始める場合には慎重かつ計画的な準備が不可欠と言えます。

例えば、需要の分析は必要でしょう。目指す市場での需要を詳細に調査し、顧客のニーズを理解します。競合の分析も必要でしょうか。既存の競合他社や代替商品との競争状況を分析し、差別化ポイントを見つけていきます。ビジョンとミッションの策定も必要かもしれませんね。事業の目的や方針をまとめ、長期的なビジョンを確立します。収益モデルの構築も不可欠でしょう。収益を上げるための具体的な戦略や価格設定を明示します。もちろん資金面での検討も必要です。事業の立ち上げや運営に必要な資金を見積もったり、資金調達の手段を検討し、投資家や銀行からの資金調達を計画します。

ただ、これらはどのような事業を始め場合でも共通の検討事項であると言えます。

何も建設業に限らず、飲食店や私たち士業が事務所を始める場合でも検討すべき事柄です。

「建設業」を始める場合、もしくは既に建設業を行っている場合には、これらに加えて「法律の規制」が非常に重要なポイントとなります。

法令順守が自社の建設業の拡大を後押しする一方で、許可の失効や営業停止等と裏表の関係にあるとも言えます。

これらの「基本的な考え方」を把握しておくことは、建設業を継続しておこなうためには不可欠です。

この記事を書いている私自身の頭の整理も兼ね、これから建設業を立ち上げる皆さん、既に建設業に携わる皆さんにも役立つよう、「建設業の基礎中の基礎」について書いてみたいと思います。

建設業とは?・・・29業種の建設工事の完成を請け負う事業です。

建設業は現在(令和5年現在)、29業種に分類されています。

具体的には、「土木一式」「建築一式」「大工」「左官」「とび・土工・コンクリート」「石」「屋根」「電気」「管」「タイル・れんが・ブロック」「鋼構造物」「鉄筋」「舗装」「しゅんせつ」「鈑金」「ガラス」「塗装」「防水」「内装仕上げ」「機械器具設置」「熱絶縁」「電気通信」「造園」「さく井」「建具」「水道施設」「消防施設」「清掃施設」「解体」の29種類です。

したがって、建設業許可もこの29業種に分かれています。許可取得の際はこの29業種から自社が必要な許可を選択し、建設業許可申請を行います。

ただし、業種ごとに必要な資格・実務経験・学歴等がありますので、自由に選択できる訳ではありません。それは別の記事で詳述します。

どんなときに建設業許可が必要?許可が無ければ建設業ができない?

「建設業」という業界に参入する場合、自社が建設業を行おうとする場合には、必ず「建設業許可」が必要なのでしょうか。

この点「軽微な建設工事のみ請け負うことを営業する場合」については、必ずしも建設業の許可を必要とはしません。

言い換えれば、軽微な建設工事のみを行う場合は建設業許可を取得しなくても自由に営業できます(ただし、電気工事、解体工事、浄化槽工事は別途各業法上の登録が必要です。)。

そのため、建設業法上は、「建設業者=建設業許可業者」と「建設業を営む者=許可を受けているか否かを問わず、全ての建設業を営む者」と、呼び方を区別しています。

とは言いながら、弊社にも「建設業許可がないと契約できないと言われている」「元請から建設業許可を取るように言われている」という相談が寄せられます。

その意味では、現在は「軽微な建設工事」であるか否かとは関係のない状況があると言えます。

建設業許可の要不要を判断する「軽微な建設工事」とは

では、建設業許可の要不要を判断する「軽微な建設工事」とはどのような工事を言うのでしょうか。この点、「軽微」というのは工事の難易度という意味ではなく、単純に請け負う金額を示しています。

すなわち、工事一件の請負代金の額が以下のいずれかに該当する場合は「軽微な建設工事」として許可が不要なのです。

①建築一式工事の場合・・・1,500万円(税込)に満たない工事、又は延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事

②その他の建設工事の場合・・・500万円(税込)に満たない工事

建設業法上は上記の場合は建設業許可が不要なのですが、実際のところはそうではない実情についてはすでに述べたとおりです。

「附帯工事」という考え方

「附帯工事」についても説明します。

「附帯工事」については、建設業法第4条で、「許可を受けた建設業以外の建設業に係る建設工事であっても、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する工事であれば、請け負うことができる」と定められています。

この「附帯工事」ですが、その性質は次の2つが考えられます。

①主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事

例えば、管工事の施工に伴って必要を生じた熱絶縁工事や、屋根工事の施工に伴って必要を生じた塗装工事、という状況が考えられますね。

②主たる建設工事を施工するために生じた他の従たる建設工事

例えば、建築物の改修等の場合の電気工事の施工に伴って必要を生じた内装仕上げ工事や、建具工事の施工に伴って必要を生じたコンクリート工事、左官工事、という状況が考えられます。

附帯工事であるか否かの判断は、建設工事の注文者の利便等を基準として、その主たる建設工事の施工等に関して、他の従たる建設工事とすることの必要性や相当性を、それらの工事の関連や一体性等を踏まえ総合的に検討して判断することになります。

建設業独自の契約構造「元請け」「下請け」とは

建設業特有の契約構造としてお馴染みであるのが「元請け」「下請け」という契約構造関係です。

ところでこの「元請け」「下請け」は建設業法での呼び方と実際の通称、そして契約上の名称が異なっているので混乱することもあります。

以下で明確にしておきます。

発注者・元請負人・下請負人について、「建設業法上」「通称」「契約上の名称」がそれぞれ異なっていて、何がどれに当たるのか、というお話です。

通称 発注者(施主) 元請業者 一次下請 二次下請 三次下請
建設業法上 発注者 元請負人

下請負人

元請負人

下請負人

元請負人

下請負人
契約上 注文者(甲)

請負人(乙)

注文者(甲)

請負人(乙)

注文者(甲)

請負人(乙)

注文者(甲)

請負人(乙)

建設工事の「請負契約」とは、報酬を得て建設工事(29業種)の完成を目的として締結する契約のことをいいます。

資材購入、調査業務や運搬業務などはその内容自体が建設工事ではないので、建設工事の請負契約には該当しません。

建設業許可の種類

「知事許可」と「大臣許可」

建設業の許可には「知事許可」と「国土交通大臣許可」という2つの考え方があります。

「知事許可」は1つの都道府県にのみ営業所を持つ場合です。

複数の営業所を持っている場合でも、それが1つの都道府県内に収まる限りは「知許可」です。

「国土交通大臣許可」は2つ以上の都道府県に営業所を持つ場合です。

新規で建設業許可を取得する場合には自社の営業所が県内のみであるのか他県にも存在するのかでいずれの許可を取得するか判断が必要になります。

既に建設業許可を取得している場合でも、新規に営業所を設置することで知事許可から大臣許可への変更が必要となる可能性もあるでしょう。

逆に規模縮小や県外営業所が不要になった、という理由で大臣許可から知事許可へ変更するケースも考えられます。

「営業所」の考え方

さて、大臣許可と知事許可の判断基準となる建設業法で言う「営業所」とは、本店、支店、常時建設工事の請負契約を締結する事務所を言います。少なくとも以下のような要件を備えていることが求められます。

これらの要件が満たされた営業所は「建設業法上の営業所」であり、そうでない場合は存在しても「建設業法上の営業所」ではありません。

そのため、ある営業所が一般的な営業所の形式を整えて実際に存在していても、それが「建設業法上の営業所」であるとは限りません。

①請負契約の見積り、入札、契約締結等の実態的な業を行っている。

②電話や机、各種の事務台帳等、居住部分などとは明確に区分された事務室が設けられている。

③建設業の経営経験を有する役員等、又は建設業法施行令第3条の使用人(①に関する権限を付与された者)が常勤している。

④専任技術者が常勤している。

入札参加資格申請などではこの「営業所」の内容が重視される傾向があります。

例えば福島県福島市に営業所を持つ建設業許可業者が宮城県仙台市の入札参加資格を得るためには、仙台市に「営業所」を設置していることが重視される、ということです(あくまでも例です)。

「一般建設業」と「特定建設業」

建設業の許可は、「一般建設業」と「特定建設業」に区分されています。

この点、同一の建設業者が、同一業種について一般と特定の両方の許可を受けることはできません。株式会社Aは本店(東京都)で「土木一式」の特定建設業を取得し、仙台支店で「土木一式」の一般建設業を取得することはできません。

一般建設業と特定建設業の違いは、端的に言えば下請けにまわせる工事の金額です。

工事の一部を下請に出す場合で,その契約金額(複数の下請業者に出す場合はその合計額)が 4,500万円(建築一式は7,000万円)以上になる場合には「特定建設業」が必要であり、工事の一部を下請に出す場合で,その契約金額(複数の下請業者に出す場合はその合計額)が 4,500万円(建築一式は7,000万円)未満、又は工事の全てを自社で施工する場合は「一般建設業」で可能です。

この特定建設業の制度は、下請負人の保護などのために設けられているもので、法令上特別の義務が課せられています。

これが「指定建設業」という考え方で、7業種(土木工事業,建築工事業,管工事業,鋼構造物工事業,舗装工事業,電気工事業及び造園工事業)については,施工技術の総合性等を考慮して「指定建設業」と定められており,特定建設業の許可を受けようとする者の専任技術者は,一級の国家資格者,技術士の資格者又は国土交通大臣が認定した者でなければなりません。

自社が元請けの立場となり、下請けとの契約が発生する場合にははたして一般建設業で問題ないのか、特定建設業を取得する必要性はないか、必要があるとして資格者等の体制が整っているか、検討しておく必要があります。

また、特定建設業には「財産的要件」も定められており、資本金が2,000万円以上、純資産が4,000万円以上などいくつか財務上の要件がありますので注意が必要です。

建設業許可の有効期間について

建設業許可の有効期間は「5年」です。

細かく言えば許可のあった日から5年目の許可日に対応する日の「前日」をもって満了します。許可の有効期間の末日が日曜日等の行政庁の休日であっても関係なく、同様の取扱いになります。

そのため,引き続き建設業許可を維持して建設業許可者として引き続き営業する場合には,期限が満了する日の30日前までに,許可を受けた時と同様の手続きを経て許可の更新申請を行う必要があります。更新の手続きを怠れば期間満了とともに建設業許可は効力を失い,建設業許可業者として営業することができなくなります。

この点、許可の更新の申請を行えば有効期間の満了後であっても許可又は不許可の処分があるまでは,それまでの許可が有効ではあります。

つまり極論を言えば許可満了の前日に更新申請を受け付けて貰えれば、許可通知書が発行されるまで従前の許可は有効である、という話ですが、前日に申請を行っても書類不備で受付されなければその時点でアウトです。極めて危険ですので十分余裕を持って更新申請を行いましょう。

自社の許可日はいつか、許可有効期限はいつまでかを必ず把握し(建設業許可標識の作成が義務ですので、事務所内に掲示することで一定の期日管理にはなるでしょう)、少なくとも2か月前にはある程度準備を整えておきたいところです。

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