【2024/7/6更新】
本体記事で述べたように、建設業許可における「経営業務管理責任者」として認められるためにはいくつかの要件がありました。
(再確認)経営業務管理責任者の要件
1.「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者」
2.「建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けたものに限る)として経営業務を管理した経験を有する者」
3.「建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者」
4.常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当する者であって、かつ財務管理の実務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする「建設業を営む者」にあっては当該「建設業を営む者」における5年以上の業務経験に限る。以下この「ロ」において同じ)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置く者であること。
①建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者に限る)としての経験を有する者。
②5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し2年以上の役員等としての経験を有する者。
それぞれどのような人が該当するかについては別のページで詳述していますのでそちらをご参考頂くとして、建設業許可申請においては例えば「うちの取締役のうちの1人は建設業に関し5年以上の経営業務管理責任者としての経験を有する者だから建設業許可申請をします」と言っても受け付けてはもらえません。
許可申請・行政手続である以上はその裏付け書類が必要だからです。
いくら口頭でそうだと言っても、裏付け書類で証明できなければ意味がないのです。
それでは実際にどのような書類で証明することになるのか、説明したします。
「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者」の確認資料
①法人の場合は「履歴事項全部証明書」「閉鎖事項証明書」等
「5年以上の経営業務管理責任者としての経験」で一番あり得るのは過去いずれかの建設企業において「取締役」に就任していたケースです。(ちなみに「監査役」の経験は残念ながら含まれません。)
それを証明するのが就任していた建設企業のいわゆる「登記事項証明書」です。
過去の履歴まで記載さえているものが「履歴事項全部証明書」、履歴事項全部証明書に載り切れない過去の履歴を証明するものが「閉鎖事項証明書」です。
取締役に就任していれば履歴事項全部証明書等で「就任日」が分かります。
その後重任していれば最大10年ごとに「重任」の登記がなされ、最終的には「退任時」「辞任日」まで取締役であったことが証明できます。
その期間が5年以上であれば、その期間は証明できるわけです。
尚、実際まれにあるケースですが取締役(であると自認している人)自身が「自分は取締役であった」と思っていても、実は取締役として登記されていなかったというケースもありますので必ず確認が必要です。
②個人事業主の場合は「確定申告書」
個人事業主の場合は法人ではありませんので登記がなされません。
そのため過去5年以上分の「確定申告書」で証明することになります。
この点、確定申告書は「税務署の受付印」又は「電子申告の到達目メール」も添付できなければ認められないのが一般的です。
もっともらしい申告書を偽造して申請することの防止とも言えます。
③過去の建設業許可通知書や変更届(決算にかかるもの、いわゆる「決算変更届」)
経営業務管理責任者が5年以上在籍した会社が建設業許可を有していた場合、5年の建設業の経営経験を証明するために建設業許可通知書、決算変更届を提出します。
建設業許可通知書があれば、少なくとも5年間は建設業を行っていた、と見られるということです。
自治体によっては許可通知書では認めないという場合もあります。1枚では5年のうちに廃業しても通知書上は5年の許可があるからという説明を受けたことがありますが、2枚提出できれば(つまり10年分)少なくとも前の5年は更新している以上5年継続しているのでは?と思うのですが。
許可通知書を認めない自治体では「決算変更届」を求められるケースが多いです。
決算変更届は許可業者が決算後4か月以内に毎年提出するものですので、5期分提出することで5年分を証明できる、ということです。
経営業務管理責任者となろうとする人が「建設業法上の令3条使用人」であった場合は、その「就任時の変更届」「退任時の変更届」を提出することでその間の期間を証明します。
④請負契約書、注文書
建設業許可を取得していなかった場合は過去の請負契約書や注文書で証明します。
1年につき何件の注文書を提出しなければならないのか、それは自治体によって異なります。
この点、「請負契約書として記載すべき事項が記載されていない」「印紙が貼られていない」「注文書に工期や工事場所が記載されていない」「押印がない」という理由で提出した請負契約書や注文書が認められないパターンもあります。日頃からの整理は必要です。
尚、過去の注文書が残っていない場合は、通帳の写しや請求書の控え、場合によっては注文者から発注したことの証明書を得る等の対応で認められるケースがあります。
請負の実績がないのに注文書等を捏造するのは論外ですが、請け負った事実はあるが書類が残っていない、というケースはあり得るわけで、補完書類の提出等の代替手段で認めて貰える場合もあります。
「建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けたものに限る)として経営業務を管理した経験を有する者」の確認資料
①執行役員等の地位が業務を執行する社員、取締役又は執行役に次ぐ職制上の地位にあることを確認するための資料
これは社内の「組織図」等が想定されています。
単に組織図を提出すれば良いわけではなく、経営業務管理責任者となろうとする人がどの地位にあったのか、その地位が取締役等の直下の地位にあたるのか、等が組織表上読み取れるか否かが重要です。
②業務執行を行う特定の事業部門が建設業に関する事業部門であることを確認するための資料
これは社内の「業務分掌規程」等が想定されます。
経営業務管理責任者となろうとする人が所属する部署が建設業に関する事業部門であることが規定上読み取れるかいなかが重要です。「建設業」という記載がなかったため認められなかったというケースもあります。
③取締役会の決議により特定の事業部門に関して職務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ取締役会の決議により定められた業務執行の方針に従って特定の事業部門に関して代表取締役の指揮及び命令のもとに具体的な業務執行に専念する者であることを確認するための資料
これは定款や執行役員規程、職務分掌規程、取締役会規則、取締役就任規程、取締役会議事録等が想定されます。
④執行役員等として経営管理経験の期間を確認するための資料
これは人事発令書や取締役会議事録等が想定されます。
実際にその人が必要な期間その職にあったことを証明するためです。
「建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者」の確認資料
①被認定者による経験が業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位における経験に該当することを確認するための資料
これは社内の「組織図」等が想定されます。
単に組織図を提出すれば良いわけではなく、経営業務管理責任者となろうとする人がどの地位にあったのか、その地位が取締役等の直下の地位にあたるのか、等が組織表上読み取れるか否かが重要です。
②被認定者における経験が補佐経験に該当することを確認するための資料
これは社内の「業務分掌規程」や「過去の稟議書」等が想定されます。
③補佐経験の期間を確認するための資料
これは「人事発令書」等が想定されます。
適切な「確認資料」を提出することで初めて認められる
法律実務の世界ではよく「主張と立証」と言います。
私も過去司法試験を勉強していた時期がありますが、「主張」と「立証」はセットの関係であり、証明できないものを主張はできません。
あまり固く考える必要はないのですが、経営業務管理責任者の場合も5年の経営経験であれば「5年間会社の役員等であったこと」「その5年の間、会社が建設業を行っていたこと」を口頭ではなく書類で証明しなければなりません。
適切な書類で適切に証明する。
そうして初めて経営業務管理責任者として認められることとなります。
(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)
行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。
【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関
経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。
許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。