建設業許可を取得して、それで許認可手続きは終わりではありません。
むしろ自動車で言えばメンテナンスのように変更の都度手続きを行う必要があります。
これを怠ると建設業許可を失う可能性も。
変更届についてご説明します。
変更届は忘れずに
建設業許可を取得後、会社として様々な変更があると思います。
役員の就任、退任や本店の移転、資本金額の変更など変更事由は様々ですが、「変更届」の提出は建設業法上の義務ですので、「うっかり忘れていた」では済まない場合もあります。
どのような場合にどのような変更届を出さなければならないのか、見ていきましょう。
そもそも「変更届」とは?
建設業許可を受けた後、建設業法上の変更事項に該当する場合には、必要な書類を添付した「変更届出書」を定められた期限内に管轄の土木事務所等に提出する必要があります。
提出しなければならない変更届を提出しなかったり、あってはいけないことですが虚偽の記載をした変更届を提出したときは、罰則の適用(建設業法第50条第1項第2号及び第3号)があるだけでなく、建設業者に対して監督処分(法第28条第1項)が行われる場合があります。
法律で定められた義務ですから「忘れた」という理由は通用しません。
「法律を知らなかった」という理屈は通用しないのです。
その一方で、例えば「あなたの会社では役員変更があったようなので30日以内に変更届を提出して下さい」と自治体が教えてくれることもありません。自治体が皆様の会社に変更があったことを知る由はないですし、完全に自己管理の世界となります。
そのため変更届について理解しておくことは建設業許可維持のために必須と言えます。
完全なる自己管理の世界でありながら、「知らなかった」では済まされない。
簡単に考えられがちな「変更届」ですが、恐ろしい手続きとも言えます。
常勤役員や専任技術者は、他社と重複登録できません
既に許可を受けている他の建設業許可業者の常勤役員等、専任技術者、建設業法施行令第3条に規定する使用人や他社で常勤勤務をしている者は、自社の経営業務の管理責任者、専任技術者、建設業法施行令第3条に規定する使用人として登録することはできません。
考えてみれば当然のことです。何故ならこれらは「常勤」であることが求められているから。
実際に弊社でも新規申請時に「専任技術者が他社の専任技術者として登録されているので申請を受け付けられない」と言われ、慌てたことがあります。
当該専任技術者の方は前職の建設業許可業者で専任技術者として登録されていたことまではヒアリングで確認しておりましたが、既に退職していたと聞いておりました。
上記自体を受けて更に詳しく確認したところ、前の会社で専任技術者の交代に関する変更届を提出していなかった、ということが判明しました。
ご本人は退職して当然変更されたと思っていたわけです。
本件はその後、前の会社に変更をお願いして手続きを行ってもらい、無事に重複状態を解消して許可となりました。
「変更登記をした場合」「許可内容を変更した場合」に変更届が必要
変更届の提出が必要となるのは大きく分けて「変更登記がされた場合」「許可内容を変更した場合」です。
「変更登記をした場合」は、例えば会社に新たな役員が就任した場合には、2週間以内に法務局への役員変更登記が必要ですが、それとともに管轄自治体へ30日以内に建設業法上の変更届(役員変更)が必要です。
他にも商号の変更や本店移転、資本金額等がこれに該当します。
「許可内容を変更した場合」は、例えば営業所の専任技術者が退職して代わりの技術者が専任技術者となる場合、法務局への変更登記は必要ありませんが建設業許可上「専任技術者」の内容が変わりますので2週間以内に変更届(専任技術者)が必要です。
以下に具体的な変更届を記載します。どのような場合にいつまでに変更届を提出するか、参考になると思います。
変更事項 | 添付書類 |
名称又は商号 (変更後30日以内) |
①変更届出書 |
営業所の名称・所在地 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) ③営業所所在地の確認資料(写真等) |
営業所の新設 (変更後30日以内) |
①変更届出書 |
営業所の廃止 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②建設業法令3条に規定する使用人の一覧表 |
営業所の業種追加 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②専任技術者変更・追加に関する変更届も併せて提出 |
営業所の業種廃止 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②専任技術者変更・削除に関する変更届も併せて提出 |
資本金額 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) ③株主(出資者)調書(※変更がある場合) |
氏名(改姓・改名)<法人の役員・支配人・個人事業主> (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②(法人の場合)登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) ③(個人事業主の場合)戸籍抄本等改姓・改名が分かる書類 |
役員等(新任) (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②役員等の一覧表 ③誓約書 ④許可申請者の住所、生年月日等に関する調書 ⑤登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) ⑥登記されていないことの証明書 ⑦身元(身分)証明書 ⑧株主(出資者)調書 ※変更がある場合 ⑨100分の5以上の株主、100分の5以上の出資者に関しては①②③④⑧ |
役員等(退任) (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②役員等の一覧表 ③登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) |
代表者 (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②役員等の一覧表 ③登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) |
支配人(新任) (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②誓約書 ③建設業法令3条に規定する使用人の一覧表 ④建設業法令3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 ⑤登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) ⑥登記されていないことの証明書 ⑦身元(身分)証明書 |
支配人(退任) (変更後30日以内) |
①変更届出書 ②登記事項証明書(変更履歴が分かるもの) |
欠格要件に該当したとき (変更後2週間以内) |
①届出書 |
建設業法令3条に規定する使用人 (変更後2週間以内) |
①変更届出書 ②誓約書 ③建設業法令3条に規定する使用人の一覧表 ④建設業法令3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書 ⑤登記されていないことの証明書 ⑥身元(身分)証明書 |
経営業務の管理体制(規則第7条1号イ該当) (変更後2週間以内) |
①変更届出書 ②常勤役員等証明書 ③常勤役員等の略歴書 ④役員等の一覧表 ⑤経営業務の管理体制の確認資料 |
経営業務の管理体制(規則第7条1号ロ該当) (変更後2週間以内) |
①変更届出書 ②常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書 ③常勤役員等の略歴書 ④常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書 ⑤役員等の一覧表 ⑥経営業務の管理体制の確認資料 |
専任技術者(変更・追加) (変更後2週間以内) |
①変更届出書 ②専任技術者証明書 ③専任技術者一覧表 ④技術者の要件を証する書面 ⑴ 一般建設業の場合(いずれか) ア 卒業証明書と実務経験証明書 イ 実務経験証明書 ウ 資格証明書 ⑵ 特定建設業の場合(いずれか) ア 上記⑴ア、イ、ウのいずれかと指導監督的実務経験証明書 イ 資格証明書の写し ⑤専任技術者の確認資料 |
変更後30日以内・2週間以内とは
変更届には「変更後30日以内」「変更後2週間以内」という期限があります。
特に登記に関わる変更で問題になるのが、「変更日」と「登記完了日」いずれで考えるかという点です。
例えば令和5年8月1日に役員が就任し、8月10日に登記が完了したとします。
添付する登記事項証明書を法務局で取得できるのは8月10日ですが、変更届提出期限の「30日以内」は8月1日から起算します。
つまり「登記が完了した=登記事項証明書が取れるようになった日」ではなくあくまで「実際の変更日」で考えます。
登記に関わる変更届提出期限が「2週間以内」ではなく「30日以内」とされているのはこのためです。
再度言います・・変更届は忘れずに
変更届を怠ると、建設業許可の更新ができない、最悪建設業許可を失う、致命的な問題につながる可能性があります。
自社の許可内容をしっかり把握し、期日管理を徹底しましょう。