ひと昔前の話ですが、「建設業」では外国人を「直接」雇用することができない(「間接」的には監理団体を通じて雇用できる技能実習制度があります。)、というのが当たり前の考え方でした。
しかしながら我が国において中小・小規模事業者をはじめとする人手不足は大変深刻化しており、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきておりますが、それは建設業でも同じことです。
そのため、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築することが強く求められております。
そこで平成31年4月に創設された新しい在留資格が「特定技能」であり、建設業にも特定技能が解放されました。
弊社はこのとき、いち早くそのサポートを行う機会に恵まれ、当時「東北初の建設特定技能」としてベトナム人3名の手続きを行いました。
その後も建設特定技能の草分け的存在として、県内各社の特定技能外国人雇用のサポートをしております。
外国人雇用についてはハイフィールド行政書士法人特定技能サイト
建設特定技能の現状
建設特定技能の制度は現在どんどん見直されており、より利用しやすい制度、つまり建設業者側としては外国人を雇用しやすい制度に変化してきております。
そこで、このサイトでも最新の情報を届けていこうと思います。
建設特定技能の在留資格は「3つの業務区分」に分けられる
特定技能外国人を雇用する場合は出入国管理局へ申請を行い「在留資格認定証明書」の交付を受けて海外から呼び寄せるか、既に日本に在留している場合は在修資格の「変更許可」を受ける必要があります。
「建設特定技能」には3つの業務区分がありますので、雇用する外国人が従事する建設工事の種類によって、該当する1つ(場合によっては2つ)の業務区分の指定を受ける必要があります。
建設特定技能の業務区分
業務区分が「3区分」に統合され、業務範囲が拡大されています。
その結果、現在は従来の技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業がこの3区分に分類されています。
業務区分「土木」
「さく井工事業」「舗装工事業」「しゅんせつ工事業」「造園工事業」「大工工事業」「とび・土工・コンクリート工事業」「鋼構造物工事業」「鉄筋工事業」「塗装工事業」「防水工事業」「石工事業」「機械器具設置工事業」
業務区分「建築」
「大工工事業」「とび・土工・コンクリート工事業」「鋼構造物工事業」「鉄筋工事業」「塗装工事業」「防水工事業」「石工事業」「機械器具設置工事業」「内装仕上工事業」「建具工事業」「左官工事業」「タイル・れんが・ブロック工事業」「清掃施設工事業」「屋根工事業」「ガラス工事業」「解体工事業」「板金工事業」「熱絶縁工事業」「管工事業」
業務区分「ライフライン・設備」
「板金工事業」「熱絶縁工事業」「管工事業」「電気工事業」「電気通信工事業」「水道施設工事業」「消防施設工事業」
「建設特定技能」外国人となるルート
まず、特定技能には「特定技能1号」「特定技能2号」があります。
特定技能1号は、技能水準として図面を読み取り、指導者の指示・監督を受けながら適切かつ安全に作業を行うための技能や安全に対する理解力等を有し、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するための知識と経験を有する外国人であり、在留期間は通算で5年が上限です。
特定技能2号は、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての経験を有し、熟練した技能を有する外国人であり、在留期間の上限がありません。扶養する配偶者と子の帯同も可能です。
特定技能1号になる2つのルート
1.試験合格ルート
日本語試験と技能試験に合格するルートです。
日本語試験については「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語評価試験(N4以上)」に合格する必要があります。
技能試験については「技能検定3級」又は「建設分野特定技能1号評価試験」に合格する必要があります。日本語試験、技能試験いずれも海外・国内で実施されます。
2.技能実習ルート
2号技能実習を良好に修了した場合、3号技能実習を修了した場合は「試験合格ルート」で求められる日本語試験、技能試験を免除されます。
特定技能2号になるためのルート
特定技能2号になるためのルートは現状1つしかなく、班長としての実務経験に加え、「建設分野特定技能2号評価試験」又は「技能検定1級」に合格する必要があります。
外国人に求められる技能水準について(基本)
特定技能1号
「特定技能1号」で在留する外国人(以下「1号特定技能外国人」と呼びます)には、相応の知識や経験が必要です。これは、一定期間の実務経験が必要な技能を指し、特別なトレーニングを受けずにすぐに一定の業務ができる水準を指します。この技能水準は、分野ごとの運用方針に基づいて定められた特定産業分野の業務に対応する試験などで確認されます。さらに、「1号特定技能外国人」には、ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力が基本とされます。それに加えて、各特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められます。この日本語能力水準も、分野を所管する行政機関が定める試験などで確認されます。
特定技能2号
「特定技能2号」で在留する外国人(以下「2号特定技能外国人」とします)には、高度な技能が求められます。これは、長期間にわたる実務経験などで培った熟練した技能を指し、既存の専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人と同等かそれ以上の高度な専門性・技能が必要なものです。例えば、自己判断で高度に専門的・技術的な業務を遂行できるか、または監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準を指します。この技能水準は、分野ごとの運用方針に基づいて定められた特定産業分野の業務区分に対応する試験などで確認されます。
受入れ機関(建設会社)の責務
関係法令の遵守
特定技能外国人を雇用する建設会社は、「特定技能外国人の受入機関」(以下「特定技能所属機関」と呼びます)と呼ばれます。
特定技能所属機関は、法令に従うだけでなく、本制度が意図通りに適切に機能し、外国人の安定かつ円滑な在留活動を確保する責務を担います。
特定技能所属機関と外国人の雇用に関する契約(法第2条の5第1項に定める「特定技能雇用契約」を指します。以下同じ。)については、外国人の報酬が日本人と同等以上であることなど、所定の基準に適合している必要があります。同時に、特定技能所属機関自体も、特定技能雇用契約を適正に履行するための基準を満たす必要があります。
さらに、特定技能所属機関は特定技能外国人を受け入れた後、その状況などについて、地方出入国在留管理局に定期的または随時の届け出を行わなければなりません。
建設特定技能受入計画の許可
特定技能所属機関たる建設会社は、雇用の前に国土交通省による「建設特定技能受入計画の認定」を受けなければなりません。
認定を受けるには大前提として以下の要件がありますので、事前準備が欠かせません。
- 建設業許可を取得していること
- 建設キャリアアップシステムを運用していること
- 特定技能外国人受入事業実施法人に加入していること(正会員・賛助会員)
- 常時10人以上を雇用している場合は就業規則及び賃金規定を作成していること
支援の実施
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人が「特定技能」の在留資格に基づく活動を円滑かつ安定的に行えるよう、職業生活、日常生活、社会生活の支援(以下「1号特定技能外国人支援」と呼びます)を提供する責務があります。このため、特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画(法第2条の5第6項に定める「1号特定技能外国人支援計画」を指します。以下同じ。)を策定しなければなりません。1号特定技能外国人支援計画については、適切な基準を満たすことが求められ、特定技能所属機関自体も、1号特定技能外国人支援計画を適正に実施できるように必要な基準を満たす必要があります。
特定技能所属機関は、他の機関に1号特定技能外国人支援計画の一部または全部を委託することができます。また、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部を委託した場合は、1号特定技能外国人支援計画の適正な実施が確保されているとみなされます。
(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)
行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。
【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関
経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。
許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。