行政書士が解説「建設業許可の更新は要注意」

【2024/7/6更新】

ご存じの通り、建設業許可は5年ごとに更新があります。

新規と違って簡単だから・・・と油断していると、実は沢山の問題点が。

直前に気付いても更新期限に間に合わず「失効」という事態も実際にあります。

どういった点に注意すればいいのか、考えていきましょう。

基本は「更新の期限」を忘れないこと

「5年に一度の更新」ということは皆さん理解しているでしょう。

ふとした時に許可通知書や金看板を見て「あ、あと3年で更新か」「再来更新か」「ああもう来年更新だな」と呟いているうちに、新規許可から数年経って信用もでき始め、社長の日々の営業努力が実って突然沢山の仕事が舞い込みます。

そして鬼のような忙しさを過ごしていると「あ・・・!許可が切れている・・・」という恐ろしい事態が実際にあるのです。

1日過ぎても失効は失効です。許可通知書の許可期限は必ず覚えておきましょう。

弊社でも更新許可申請は新規許可申請以上に最新の注意を払うべき手続きと位置付けています。

何故なら、更新をする時点では既に会社として「建設業許可ありき」のビジネスモデルを組んでいるはずだからです。つまり事業計画が建設業許可を取得している前提で回っているということ。

更新の可否が会社そのものを左右することになるからです。

余裕をもって更新の準備すること

更新の際は「建設業更新許可申請書」を作成し、提出するのですが新規申請のときのような大量の添付書類があるわけではないものの、住民票や身分証明書、登記されていないことの証明書など一定の公的書類が必要です。

役員に遠方の方がいらっしゃったりする場合にはそれらを準備頂く時間も必要でしょう。許可期限の1週間前に準備を始めても到底間に合いません。

余裕を持って更新準備を進めましょう。

変更届の提出漏れはありませんか?

建設業許可においては様々なケースで変更届を提出する必要があります。

(この点、重要ですので別の記事でも説明します。)

役員が増えた・減った、本店所在地が変わった、営業所の場所が変わった、資本金が増えた、専任技術者が変わった、その他諸々の変更届提出事由があります。

これらの該当する事由が発生した場合に14日以内、30日以内など決められた期限内に提出しなければなりません。

さてさて、皆さん提出していますか?

提出すべき変更届を提出ない場合、れっきとした建設業法違反となります。

また、怖いのはこれらの変更届が未提出の場合は「更新許可申請を受け付けて貰えない」という点です。

考えてみれば当然でもあるのです。何故なら「変更届を提出しなければならない」と定められた建設業法に違反しているわけですから。

では忘れていた場合、更新許可申請前に提出すれば受け付けて貰えるのでしょうか。

残念ながら、担当者(県又は各地方整備局)がどう判断するかとしか言えません。

ただ、このような点を把握しておくためにも、更新の準備は余裕を持って検討しておくべきでしょう。

ここで厄介な変更届の提出漏れパターンをご紹介します。

「決算変更届」の提出漏れです。

決算変更届は毎決算年度4カ月以内に提出しなければならない書類なのですが、まれにこの書類の提出自体を失念している場合があります。

極端な場合は更新まで一度も出していないケースもあるのですが、多くの危険性を孕んでいます。

危険性① そもそも毎年出していないことが大問題
危険性② 直前に纏めて提出しようと思っても、自治体によっては過去の納税証明書が発行されない。つまり決算変更届添付すべき書類が添付不可能になる
危険性③ 過去に遡って膨大な工事資料の中から年度ごとの工事実績を作成することができるか

実際に弊社でも、このような状況で相談を受けてサポートさせて頂いたことがあり、結果的に無事更新までたどり着けたものの更新できなくてもおかしくない状況でした。

更新する際の資産状態は?

以外に盲点であるのが更新時の資産状況です。

新規許可時は一般建設業であれば500万円、特定建設業であれば資本金2,000万円や純資産4,000万円等の資産要件が明確なので分かりやすく、そこさえクリアすれば問題ないと思われがちなのですが、更新時にも資産要件はあります。

一般建設業の場合

一般建設業の場合、確かに新規申請時は「請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること」という建設業法上の要件がありました。

具体的には以下の3つ。

新規許可時の財産的要件① 自己資本の額が500万円以上であること
新規許可時の財産的要件② 500万円以上の資金調達能力があること
新規許可時の財産的要件③ 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績があること

そのため例えば宮城県知事許可では500万円を証明する預金残高証明書を添付することでこの要件をクリアできました。他の自治体等でも同様に預金残高証明書、登記事項証明書や決算書の純資産額等で「500万円」という額を証明します。

この点、更新時には③の「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績があること」が適用されると考えがちです。

これが盲点。

何が盲点なの?5年経過したから更新許可申請をするわけで、「直前の過去5年」許可を受けて営業していたわけだから財産的要件を満たすのでは?

違うのです。

令和元年4月1日に許可取得(許可の始期)した場合、更新申請書を提出するのはいつでしょう。仮に令和6年3月31日に更新申請書を出したとしても(それ自体問題ですが)丸5年にはなりません。

そのため、「最初の」更新許可申請の場合は新規同様、自己資本額が500万円か500万円以上の資金調達能力を証明しなければなりません。

たまたま資金が足りなくて更新できない、というケースが実際にあります。

この意味でも更新許可申請は余裕を持って対応することが必要なのです(2回目)

ちなみに2回目以降の更新であれば問題なく「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績があること」が適用されます。

特定建設業の場合

特定建設業の場合も大きな注意点があります。

特定建設業の場合はその取扱う工事の規模の大きさと責任により、新規許可の場合に厳しい財産的要件があるのは周知のところです。あらためて整理してみると、以下の4点が条件です。

特定建設業の財産的要件① 欠損の額が資本金の額の20%を超えていない
特定建設業の財産的要件② 流動比率が75%以上
特定建設業の財産的要件③ 資本金の額が2,000万円以上
特定建設業の財産的要件④ 自己資本の額が4,000万円以上

これらの要件はそのまますべて更新時にも要求されます。

つまり、更新直前の決算において例えば自己資本が4,000万円を切ってしまった、流動比率が75%未満だった、繰越利益剰余金が著しくマイナスだった、という場合は特定建設業が維持できなくなります。

そのため特定建設業を廃止し、一般建設業許可申請をせざるを得なくなります。

特定建設業を取得した理由の多くは下請に出す金額が4,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上であるからでしょう。このビジネスモデルが根底から覆されるわけです。

この金額を下請けに出せなくなるので。

この意味でも更新許可申請は余裕を持って対応することが必要なのです(3回目)

ちなみに特定建設業の場合は更新の際、毎回この財産的要件がチェックされます。この点も注意が必要です。

経営業務管理責任者、専任技術者がいない・・・?

新規許可時には常勤の経営業務管理責任者(常勤役員等)、専任技術者が在籍することが求められるため、これらの確認資料が必要ですが、当然ながらその状態は「維持」されなければなりません。

何故なら経営業務管理責任者(常勤役員)、専任技術者は営業所への「常勤」が求められているため、これらの立場の者が一時的にも存在しないということは建設業許可上「あり得ない」事態と言えるためです。

仮にこれらの立場の者が退職する場合には、それに代わる経験を持つ者を選任する必要があります。もちろん建設業許可上も届出を出す必要があります。

間違っても「経営業務管理責任者(常勤役員等)が既に退任している」「専任技術者が退職していない」という状態を作り出さないよう、細心の注意を払いましょう。

つまり「経営業務管理責任者(常勤役員)の不在」、「専任技術者の不在」は即建設業許可の廃業事由となるのです。

建設業許可の更新には最新の注意を払いましょう

いかがでしたか?

建設業許可の更新が決して機械的に考えられる簡単な手続きではないことをご理解いただけたでしょうか。

弊社でご依頼を頂く場合にも更新許可申請は新規許可以上に注意を払い、徹底したヒアリングをさせて頂いて万全の状態で手続きを進めております。

それだけ重要な手続きが更新許可申請です。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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