行政書士が解説「専任技術者の確認資料」

【2024/7/6更新】

本体記事(専任技術者の交代)で述べたように、建設業許可における「専任技術者」として認められるためには、一定の資格、学歴、実務経験等のいくつかの要件がありました。

(再確認)専任技術者になるための要件

1.「一定の国家資格等を有する者」

2.「許可を受けようとする建設業にかかる建設工事に関して、下記いずれかの実務経験を有する者」

①大学又は高等専門学校の指定学科を卒業した後3年以上の実務経験

②高等学校又は中等教育学校の指定学科を卒業した後5年以上の実務経験

③専修学校の専門士又は高度専門士を称する者で指定学科を卒業した後3年以上の実務経験を有する者

④専修学校の指定学科を卒業した後5年以上の実務経験

⑤1級の第1次検定又は第2次検定に合格した後3年以上の実務経験

⑥2級の第1次検定又は第2次検定に合格した後5年以上の実務経験

⑦10年以上の実務経験

⑧複数業種について一定期間以上の実務経験

それぞれどのような人が該当するかについては本体の別ページで詳述していますのでそちらをご参考頂くとして、建設業許可申請においては例えば「私は大工工事について10年以上実務経験を有する者だから専任技術者に該当します」と言っても、それだけでは受け付けてはもらえません。

経営業務管理責任者の場合と同様、許可申請・行政手続である以上はその裏付け書類が必要だからです。

いくら口頭でそうだと言っても、裏付け書類で証明できなければ意味がないのです。

それでは実際にどのような書類で証明することになるのか、開設していきます。

「一定の国家資格等を有する者」の確認資料

この場合は一番シンプルです。

該当する資格、例えば「1級土木施工管理技士」の資格を有する常勤職員又は役員がいれば、その方は「土木一式工事」「とび・土工・コンクリート工事」「石工事」「鋼構造物工事」「舗装工事」「しゅんせつ工事」「塗装工事」「水道施設工事」「解体工事(ただし資格取得時期によります)」の専任技術者になれます。

これを証明するのは当然ながら「資格者証」ですので、資格者証の提出とその方が会社に常勤していることを証明する書類が提出できれば原則認められます。

「許可を受けようとする建設業にかかる建設工事に関して、下記いずれかの実務経験を有する者」の確認資料

この場合はいくつかの書類で証明する必要があります。

上記②~④に関しては「指定学科を履修し、修了したことを証明する書類」「実務経験を証明する書類」があります。

「指定学科を履修し、修了したことを証明する書類」は卒業証明書や単位取得証明書等の履修科目、取得単位数が確認できる書類を添付しますが、例えば建築一式工事の場合は「建築学」「都市工学」等の学科が考えられるところ、正直自己判断で済ませるのは危険です。

そのため事前にこれらの書類を取り寄せ、審査庁に相談するのが安全です。

「実務経験を証明する書類」は、卒業後に勤務した会社においてその会社が請け負った建設工事の請負契約書、注文書等を3年分~5年分添付します。

⑤~⑥に関しては1級、2級資格の第1次、第2次検定に合格した合格証と必要年数分の注文書等を提出します。

「10年以上の実務経験」の確認資料

このパターンが最も難度が高いと言えます。

弊所でも10年実務経験のパターンは結果的に提出資料が格段に多くなり、過去には厚さ30㎝の書類になったこともあります。

10年実務経験を証明するものは、その方が所属していた会社の工事請負契約書、注文書等を10年分準備します。

この点、「10年分」をいかに考えるか、考えると言っても審査庁がどの程度の注文書等を求めてくるかということなのですが、それがその後の手続きの進行を左右します。

自治体によって異なるのですが、10年について1年に1枚の注文書の提出を求める(つまり合計10枚)、という自治体もあれば、10年=120か月分、1ヵ月に1枚の注文書を求める(つまり合計120枚)、という自治体もあります。

過去10年遡って注文書を準備するのもなかなか難儀ですが、勤務先を変更している場合などは更にその難易度が高くなる可能性があります。

「大工工事」の許可を取得したい場合は「大工工事」に関する注文書が必要です。

他の工事業種では認められませんので注意が必要です。

複数業種について一定期間以上の実務経験

一般建設業に関しては10年以上の実務経験による専任技術者について、複数業種に係る実務経験も認められるようになりました。

例えば「とび・土工・コンクリート工事」の許可を取得する場合、土木一式工事及びとび・土工・コンクリート工事に関して12年以上の実務経験を有する者であればとび・土工・コンクリート工事の実務経験を8年証明できれば専任技術者になることが可能、ということです。

言い換えれば、「とび・土工・コンクリート工事」の実務経験が8年あり、土木一式工事と併せて12年以上の実務経験があれば「とび・土工・コンクリート工事」の専任技術者になることが可能、ということです。

資格、実務経験以外の確認資料

さて、専任技術者として認めてもらうためには資格や実務経験だけではなく、もうひとつ要件があります。

それが「実務経験時代の常勤性」です。

この点、国家資格者等の場合は実務経験の証明が不要です。あくまで「実務経験の証明が必要な場合」にその実務経験を積んだ会社での常勤性の証明まで求められる、ということです。

なかなか厳しいと言わざるを得ません。実務経験があるのは分かった。次にその実務経験を積んだ先に本当に勤務していたか確認する、ということですからね。

専任技術者になる方がずっと長年自社に勤務していたのであれば問題ありません。健康保険証で事業所名と資格取得年月日が確認できれば、10年実務経験なら資格取得が10年以上前であれば良いという話に落ち着きます。

これが別の勤務先での実務経験ということであれば、社会保険の「被保険者記録照会回答票」や期間分の健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書、住民税特別徴収税額通知書、確定申告書等でひとつひとつ証明することになります。

この点も自治体により異なります。

専任技術者の実務経験証明は難しい

いかがでしたか?

建設業許可を扱う私としての正直な感想は、「専任技術者の実務経験証明は長いほど難しい」というものです。

実際10年分となると過去10年に遡って注文書等を探して頂いたり、実務経験証明書の記載をするために実績をヒアリングする必要があります。

そこをクリアしてもその10年に関し会社に勤務していたことを証明するために社会保険の記録等を揃える必要があります。

「実務経験の証明」とされるためには「工事の実績」と「勤務実態」の両方の証明が必要ですので、どちらか一方が証明できなければ「実務経験」とされません。

法律実務の世界ではよく「主張と立証」と言います。

私も過去司法試験を勉強していた時期がありますが、「主張」と「立証」はセットの関係であり、証明できないものを主張はできません。

あまり固く考える必要はないのですが、専任技術者の場合も10年の経営経験であれば「10の工事経験があること」「その10年の間、経験を積んだ会社に常勤していたこと」を口頭ではなく書類で証明しなければなりません。

適切な書類で適切に証明する。

そうして初めて専任技術者として認められることとなります。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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