行政書士が解説「知らないと怖い欠格事由」

【2024/7/6更新】

建設業許可には「欠格事由」という制度があります。

「資格を欠く」というその文字どおりのイメージのとおり、これら「欠格事由」に該当すると新規で建設業許可を取得しようとしても建設業許可を取得できませんし、既に建設業許可を取得していたとしても許可を取消されるという恐ろしい事態になります。

非常に重大な話ではないでしょうか?

想定していた建設業許可が取得できなかったり、許可を持っていてもその許可が消滅するわけですから、会社の存続自体が厳しくなる事態もあり得ます。

自社に関係のないものという感覚ではなく、必ず理解していなければならない話と言えます。

是非理解しておきましょう。

それでは建設業許可の「欠格事由」とは、具体的にどのような話なのでしょうか。

以下の話をご理解いただいて、今後の建設業運営の必須知識として頂ければと思います。

何が欠格事由にあたるのか

1.申請書、添付書類の虚偽

許可申請書、またはその添付書類中に虚偽の記載があった場合や重要な事実に関する記載が欠けている場合は許可は行われません。それはそうですよね、事実と異なる申請をしているわけですので、許可が受けられない・許可が取り消されるという問題だけでなく官公庁への虚偽申請にもあたりますので「偽造」に当たる可能性も充分です。

いわゆる「虚偽申請」です。

そのケースは様々ですが、申請書について意図的に事実と異なる内容を記載する、不利益となる事実を隠ぺいする、偽造した書類を添付する、などがあります。この点、意図せずに認識を誤ってこれらの申請を行ったとしても結果的に虚偽申請となります。

例えば常勤役員等の略歴書。略歴書の下部には「賞罰」欄があります。この欄には行政罰であれ刑罰であれ、交通義務違反による刑罰も含め全て記載する必要がありますが、この点に関しては許可行政庁も審査中に前科照会を行います。そのため、もし何らかの前科等があった場合、「書きたくない」「忘れていた」は通用せず、書かなかったとしても照会で判明した段階で「虚偽」とされます。

2.個別の事情

許可申請者やその役員等若しくは令第3条に規定する使用人等が以下に掲げるものに1つでも該当する場合、許可は行われません。(建設業法第8条)

①法人・法人の役員等,個人事業主・支配人,その他支店長・営業所長等が,次に掲げる事由に該当しているとき。

まず欠格事由を判断される「対象」を整理しておきましょう。

対象となるのは法人の場合、個人事業の場合について以下のとおりです。

  ・法人自体

  ・個人事業主本人

  ・支配人

  ・取締役、執行役

  ・業務執行社員(合同会社等の場合です)

  ・相談役・顧問等

  ・支店長・営業所長等

  ・5%以上の株主

別な言い方をしますと、建設業許可申請においては一定の立場の人について「略歴書」の提出を求められますが、その「略歴書」の提出対象者が欠格事由の判断対象となるということです。

過去の略歴まで求めるということは建設業許可について重要な人物だということですから、その重要人物が欠格事由に該当する場合は許可を出せない、ということです。

その1 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

破産手続きに関しては比較的理解しやすいと思います。

裁判所への申立書を提出すると裁判所が「破産手続開始決定」を行い、申立者は法律上「破産者」となり建設業だけでなく様々な資格制限を受けます。

ただしそういった資格制限は一生続くわけではなく(それでは困ります)、「復権」をもって解除されます。言葉上も分かりやすいのではないでしょうか。「権利」を「回復」するので復権です。

この「復権」ですが、破産法上の手続きを粛々と進めれば多くは特別な手続きを必要としない、所謂「当然復権」となります。以下のいずれかに該当する場合に「復権」となります。

①免責許可の決定が確定

②破産手続きが同時廃止決定で確定したとき

③破産手続中に民事再生手続も開始された場合に、再生計画認可の決定が確定したとき

④破産手続開始決定後に詐欺破産罪の有罪の確定判決を受けることなく10年経過したとき

このケース以外にも「申立てによって得る復権」もありますが、これは破産者が債権者に対して債務の全部の弁済(例えば親族等から援助を受けて借金を全額返済した場合)を行った場合等、限られたケースです。

さて、建設業許可の欠格事由ですが、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」ですので、破産した場合でもこの「復権」を受ければ制限が解除されるということです。

逆の言い方をすれば復権を受けるまでは欠格事由だということになります。

その2 不正の手段で許可を受けたこと等により,その許可を取り消されて5年を経過しない者

本来は許可が受けられない状況であるにも関わらず何らかの不正手段を使って許可を得たとしても、それが露見して許可の取消を受けた場合には5年間許可申請ができません。

その3 許可の取り消しを逃れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者

上記と関連しますが、不正の手段をもって許可を取得したもののどうも許可の取り消しを受けるかも知れない。取り消し処分を受ける前に先回りして廃業してしまおう、という場合もその届出をしてから5年間は許可申請ができなくなります。

その4  建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき,あるいは危害を及ぼすおそれが大であるとき,又は請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者

杜撰な工事を施工することで公衆に危害を及ぼすおそれを生じさせたり、営業の停止を命じられてその期間が経過しない場合も欠格事由に該当します。

その5  禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり,又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

「禁固以上」は死刑・懲役・禁錮を指します。

「その刑の執行を終わり5年を経過」とは、裁判が確定して刑期を終えてから5年、と言う意味であり、「その刑の執行を受けることがなくなった日から5年」は刑の時効が完成した場合や大赦・特赦・刑の執行の免除(極めて特別な場合)を言います。

この点、「失効猶予」を受けた場合ですが、猶予期間中は欠格事由に該当しますが猶予期間が満了すると刑法第27条により刑の言い渡し自体が効力を失いますので、猶予期間経過と共に欠格事由ではなくなります。

その6 建設業法,建築基準法,労働基準法等の建設工事の施工等に関する法令のうち政令(→建設業法施行令第3条の2)で定めるもの,若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ,刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

「その5」はあらゆる罪について禁錮以上とされていました。別な言い方をすれば「罰金」であれば許容されています。

ただし一定の罪に関しては「罰金以上(つまり罰金を含む)」とすることで欠格事由の範囲を広くしていると言えます。

「刑法等の一定の罪」は、例えば「傷害」「暴行」「脅迫」「背任」「現場助勢」「凶器準備集合」等を指します。会社の役員が傷害罪で罰金刑が確定した場合、その時点で建設業許可は取り消されます。

その7 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)

実際は建設業許可の審査の時点で照会があります。

その8 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令(→建設業法施行規則第8条の2)で定めるもの

 成年被後見人又は被保佐人に該当する場合であっても、医師の診断書等により回復の見込みや医師の所見を考慮した上で、建設業を適正に営むために必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができると認められる場合については欠格事由に該当しない場合もあります。

その9 暴力団員等がその事業活動を支配する者

表面上暴力団員等が関わっていない場合でも、実質的に関わっている場合です。

欠格事由の理解は企業の防衛策

このように「欠格事由」を理解することは企業防衛の意味でも非常に大切です。

役員や株主、建設業法上の支店長(令3条使用人)がふとした間違いで欠格事由に該当してしまう(例えば懲役に該当するようなスピード違反を犯してしまった、つい挑発されて人を殴ってしまった等)と、建設業許可が消滅する可能性がある、ということもあり得る、ということを理解しておく必要があります。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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