行政書士が解説「建設企業の資金繰り対策(融資・保証編)」

【2024/7/6】

日々の資金繰り対策の重要性は建設業も他の業界も同様ではないでしょうか。

元請け・下請けという構造を基本とする建設業界ではむしろ資金繰りは真剣に向き合うべき問題だと思います。

そこでここでは資金繰りに関して「融資制度」「保証制度」についてご紹介しようと思います。

「金融支援事業」・・・出来高部分の資金化と下請債権の保証・買取(元請下請の資金繰り対策)

元請けには元請け、下請けには下請けの立場から「資金繰り」の悩みはあるのではないでしょうか。例えば以下のような悩みはないでしょうか。

元請建設企業の皆様

「受注はあるが資金繰りがちょっと厳しい」

「金融機関の借入枠にもう余裕がない」

「担保になる不動産がない」

下請建設企業の皆様

「受注したいが新しい取引先なので不安」

「あの取引先の工事代金が払って貰えるか不安」

「必要な工事だけ保証をかけたい」

「金融支援事業」は「中小・中堅建設企業」を対象とした公的金額支援サービスです。

元請建設企業向けには公共工事請負代金債権の譲渡を活用した「出来高融資制度」、下請建設企業や建設資材販売企業向けには「下請債権保全支援事業」があります。

元請・下請・建設資材販売会社まで含めた建設企業を幅広く支援する制度です。

知っておいて損はないのではないでしょうか。

対象エリア

全国が対象となります。

中小建設企業向けの金融支援事業

1.出来高融資制度

国や地方公共団体が発注する建設工事や、公共性のある民間工事を受注した元請け建設企業が、その工事の出来高に応じて、工期中にその出来高部分を低利で資金化することができます。

発注者に対する工事請負代金を融資事業者(主に都道府県の建設業共同組合)へ譲渡し、工事出来高の範囲内で建設企業は融資を受けられます。借入に対しては「一般財団法人建設業振興基金」が債務保証を行います。

①工事出来高に応じて融資を受けられる

出来高の範囲内で資金調達が受けられますので、資金繰りが楽になります。

工事請負代金の債権譲渡を行っているため、返済は発注者から融資事業者への工事代金支払いによって清算されますので、建設企業には返済の手間がかかりません。

②手続きが早い

一般財団法人建設業振興基金の債務保証のもとで融資事業者が金融機関から借り入れるという転貸融資を採るため、金融機関の融資枠を利用せず、その結果保証人や担保が不要で必要書類も最小限です。低金利でありかつ2週間程度(工事出来高査定後)で融資が受けられます。

③経審(経営事項審査)のY評点がアップする

入札参加に必要な「経審(経営事項審査)」のY評点における「負債債権機関」の負債合計金額から本融資が控除されるため、結果的に評定のアップに繋がります。

手続きの流れ

1.融資事業者(各都道府県の建設業共同組合)へ相談

2.融資事業者へ申込み

3.発注者へ債権譲渡承諾申請(融資事業者の代行もあり)

4.融資事業者と債権譲渡契約

5.融資実行

2.下請債権保全支援事業(工事請負代金債権の支払保証・買取事業)

下請建設業企業と建設資材業者を対象とした、国土交通省が資金繰り改善を目的として行う公的制度です。

支援の手段として、「債権の保証」ち「債権の買い取り」があります。

①債権の保証

建設企業が取引先に持っている債権について、取引先が倒産した際に支払いを受けられる(肩代わり)制度です。

下請は元請に対し工事施工、資材の提供を行い、代金の請求を行いますが、この代金請求権を保全することができます。

保証を行うファクタリング会社(売掛債権等を買取・保証する会社)へ申込と保証料の支払いを行い、取引先が倒産した際に補償金の支払いを受けられます。一般財団法人建設業振興基金が保証料の助成も行います。

②債権の買い取り

建設企業が取引先に持っている金額が確定した債権を買い取る制度です。

下請は元請に対し工事施工、資材の提供を行い、代金の請求を行いますが、この代金請求権自体をファクタリング会社へ譲渡し、買取手数料を差し引いた金額を債権買取代金として受け取る制度です。一般財団法人建設業振興基金が買取手数料の助成も行います。

申請のポイント

いずれの制度も申込手続きが効率化されていて利用しやすいです。

出来高融資制度は資金繰りには大変有効だと言えますし、公共工事に必要な経審(経営事項審査)の際も負債から控除されます。

下請債権保全支援事業について、出来高融資制度は「取引先の良くない噂を聞いている」「新しい取引先なので不安だ」等というケースに利用できます。下請債権保全支援事業は「急ぎで資金が必要」「銀行の与信枠が残り少ない」等というケースに利用できます。

信用不安がある取引先に対しても受注を断るケースも減るでしょうし、与信管理面でも十分利用できますので、積極的な営業展開も可能となります。

資金繰りにお悩みの際は、このような制度を利用するのもひとつの手段だと思います。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

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