行政書士が解説「建設業と産業廃棄物収集運搬業」

【2024/7/6更新】

大前提として、建設工事に伴い生じる産業廃棄物については元請業者が排出事業者となります。(法21条の3第1項)

その結果、元請業者は、発注者から請け負った建設工事(下請負人に行わせるものを含む)に伴い生ずる廃棄物の処理について事業者として自ら適正に処理を行い、又は委託基準に則って適正に処理を委託しなければなりません。

下請負人は、廃棄物処理業の許可及び元請業者からの処理委託がなければ廃棄物の運搬又は処分を行うことはできません。

下請負人が現場内で行う保管は、当該下請負人もまた排出事業者とみなして、産業廃棄物保管基準及び改善命令に係る規定が適用されます(法第21条の3第2項)。

建設業と産業廃棄物処理業は密接に結びついておりますので、必要に応じ産業廃棄物処理業の許可を得ておかなければ問題となるケースがあります。

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産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)収集運搬業許可とは

事業者が産業廃棄物や特別管理産業廃棄物を収集・運搬する際には、県知事の許可が必要です。具体的には、「産業廃棄物収集運搬業」や「特別管理産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要です。この許可は5年ごとに更新しなければならず、変更がある場合は都度変更届を提出する必要があります。また、事業内容を変更する際には、別途事業範囲の変更に関する申請が必要なこともあります。

1 産業廃棄物収集運搬業

 

 

2 特別管理産業廃棄物収集運搬業

原則として、産業廃棄物を積みこむ場所(排出事業場又は積み替え場所)及び卸す場所(積み替え場所又は処理施設)を所管する都道府県知事の許可が必要になります。

令第27条で定める市(いわゆる政令市)内で積替え保管を行う場合は該当する市長の許可が必要になります。

「業として」とは、社会的に特定または不特定の人が排出した廃棄物の処理を繰り返し行うことであり、この業務は無償で行うか、処理料金を受け取るかに関わりません。

許可の有効期間は通常5年ですが、更新許可を申請する際に処理業の実績や能力が優れていると認められると、更新期間が7年に延長されることがあります。この仕組みが「優良産業廃棄物処理業者認定制度」です。

産業廃棄物(又は特別管理産業廃棄物)収集運搬業許可に必要なこと

産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)収集運搬業許可のためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

環境に重大な影響を及ぼす廃棄物を運搬する事業においては、その事業に使用する施設や申請者の実力が、適切かつ継続的に業務を遂行できると認められる必要があります。これが備わって初めて、収集運搬業の許可が与えられます。

実際に産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)を運搬する際には、飛散や流出、悪臭などの問題がない運搬車両や容器を使用する必要があります。つまり、運搬に使用する車両や容器は、運搬する廃棄物を考慮して選ばなければなりません。

車両を使用するためには駐車場が必要であり、事業を行うためには事務所も必要です。駐車場や事務所は所有でも賃貸借でも構いませんが、許可を得るためには契約書や使用承諾書などで証明する必要があります。

積替保管施設は、飛散や流出、地下への浸透、悪臭の発散を防ぐために対策が必要です。特に特別管理産業廃棄物の場合は混入を防ぐための仕切りなども必要です。廃棄物を一定期間保管する場合は、周辺の環境悪化を防ぐ対策が必要です。

産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)の収集や運搬には適切な知識と技能が必要です。具体的には、許可申請時には公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の講習会修了証を提出する必要があります。

⑤ 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)の収集や運搬を的確かつ継続的に行うためには、経理的基礎が必要です。この要件はやや厳しいものとなります。

産業廃棄物収集運搬業の許可における「経理的基礎」

法人や個人事業主が事業を始めて3年未満であるか、経理状況が悪化している場合、管轄自治体は事業を継続できる経理的基礎を確認するために追加資料を求めることがあります。

産業廃棄物処理業を営む事業者が倒産すると、処理していた廃棄物がそのまま放置される危険があります。経営状況が良好でない場合、許可を得るには客観的に経営状況が良好であることを証明する必要があります。さまざまな悪影響が考慮され、具体的な書類が求められるケースもあります。

具体的には以下のようなケースで、それぞれ説明する書類を求められます。

例1:設立して3年未満の法人

 基本的に事業計画書と、今後5年の収支計画書、5年後の貸借対照表等を求められます。

例2:直前期の自己資本が10%未満(マイナスまでではない、自己資本が薄い場合)

 基本的に事業計画書と、今後5年の収支計画書、5年後の貸借対照表等を求められます。

 長期の借り入れがある場合は、金融機関が発行した借入残高証明書や返済予定表を求められる場合もあります。

例3:債務超過で、直前3年間の経常利益が不安定とされる場合

 基本的に事業計画書と、今後5年の収支計画書、5年後の貸借対照表等を求められます。

 長期の借り入れがある場合は、金融機関が発行した借入残高証明書や返済予定表を求められる場合もあります。

 それに加えて、公認会計士や中小企業診断士等が作成した経営診断書を求められる場合があります。

産業廃棄物収集運搬業に使う車両

収集運搬業の許可を取得する際には、車の台数に関する特定の要件はありません。例えば、トラックが1台でも許可を申請できます。ただし、1台であるからといって無理な計画を立ててしまうのは望ましくありません。

たとえば、月間数十トンに及ぶ「がれき類」を運搬する計画で、登録する車両が軽トラック1台だと計画が実現不可能です。同様に、「家畜の死体」や「動植物性残さ」を運搬する計画で、開放型のトラックに散らばった状態では周りに迷惑がかかります。

収集運搬業で一般的な車両には、「ダンプ車」「平ボディ車」「キャブオーバー」などがあります。これらの車両はがれき類や木くずなど、比較的大きなものを運搬する際によく使われます。また、家庭ごみ収集で使われる「パッカー車」もあり、圧縮しながら運搬できるメリットがあります。

特定のものや液体を運搬する場合は、ダンプやトラックでは流れ出るだけです。その場合、「タンクローリー」「汚泥吸引車」「バキュームカー」などが適しています。また、脱着装置を備えたコンテナ専用車は、排出事業者の現場にコンテナを設置し、定期的に回収して回るための車両として使われます。

さらに、一部の場合では「船舶」や「鉄道」を利用して運搬されることもあります。したがって、運搬車両は車に限らず、事業計画に合わせて様々な手段が取られることがあります。

産業廃棄物収集運搬業に使う容器

収集運搬に使用する容器はさまざまです。

重要なのは、「運ぶ品目」に合った適切な容器を選ぶことです。たとえば、「廃酸」を運ぶ際には酸に弱い鉄製のドラム缶は不適切であり、燃え殻や微粉じんをトラックに手当なしでそのまま積載することもできません。

運搬中に「飛散」「流出」を防ぐことが重要です。収集運搬に使う容器については様々なものが考えられます。

建設業と産業廃棄物は関係が深い。

いかがでしょうか。

建設工事現場においては建築、解体、整地等を行うことで必ずと言っていいほど「廃棄物」が発生します。

発生した廃棄物をいかに適法に処理するか。許可不要でも問題が無いのか、許可があったほうがいいのか、許可がなければいけないのか。

適切な判断が必要です。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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