行政書士が解説「建設業の工事請負契約書」

【2024/7/16】

建設工事の発注においては基本的に「請負契約書」や「注文書(発注書)」の取り交わしが発生します。

建設工事は請負契約に該当し、請負契約は民法上において口約束でも効力を生じます。

とはいえ、多くは高額の請負代金になることが多く工事内容も専門的、そして工事自体の成否についても公共の安全性等が問われる以上は、その建設工事の契約内容をあらかじめ書面で明確にすることが必要です。そうすることで請負代金、施工範囲等に係る元請下請間の紛争を防止することができるのです。

ここでは建設業における請負契約書について見ていきましょう。

建設業法上の契約書作成義務

建設業法では、下請契約に当たって、請負契約の内容となる一定の重要事項を明示した適正な契約書を作成し、下請工事着工前までに署名又は記名押印して相互に交付しなければならないと定められています。

(建設業法第19条、「建設産業のおける生産システム合理化指針について」(H3.2.5建設省通知)

建設業法において、以下の14の項目が必ず請負契約書に記載されていなければなりません。

①工事内容

②請負代金の額

③工事着手の時期及び工事完成の時期

④前払金又は出来高払の時期及び方法

⑤当事者の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

⑥天災その他の不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

⑦価格の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

⑧工事の施工により第3者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機会を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期

⑪工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

⑫工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その他内容

⑬各当事者の履行の遅滞その他の債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

⑭契約に関する紛争の解決方法

尚、上記①~⑭のうち④、⑨、⑫に関しては契約内容によっては取り決めがない場合もありますので、その場合は記載をする必要はありません。

また、請負契約書の対象となる工事が建設リサイクル法の対象工事である場合は、更に「別解体の方法」「解体工事に要する費用」「再資源化するための施設の名称及び所在地」   「再資源化等に要する費用」の4項目を加えて記載しなければなりません。

建設業法においては、これらを記載した請負契約書には両者の署名又は記名押印が必要とされていますが、実務上は「注文書」と「請書(注文請書)」を相互に交付する運用も多く、それでも問題はありません。

  1. 「契約書」を取り交わすパターン
  2. 「注文書・請書」と「基本契約書」のパターン
  3. 「注文書・請書」と「基本契約約款」のパターン(注文書と請書双方に基本契約約款を添付又は印刷)

工事請負契約書と建設業許可申請

いかがでしたでしょうか。

このように建設工事の請負契約書は記載項目が定められており、法令に従った運用が必要です。

これら請負契約書や注文書、注文請書に関する決まりごとは当然ながらまず実際の工事請け負いの場面における問題ですが、実は建設業許可申請の場面においても許可取得を左右する重要な役割を果たします。

許可権者たる自治体ごとに判断は異なるのですが、一般的には建設業許可申請の際に証明すべき経営業務の管理責任者の経験(最長5年)と専任技術者の実務経験(最長10年)においては、過去の請負契約書、注文書を確認資料として提出することを求められるためです。

いくら「請負の実績が5年ある」と主張してもそれを立証する請負契約書、注文書がなければ経営業務管理責任者として認められない、ということにもなりかねません。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

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