行政書士が解説「工事経歴書はしっかりと」

【2024/7/6更新】

建設業の新規許可申請、業種追加申請等、更に毎年決算後4カ月以内に提出する「決算変更届」の際に不可欠な書類が「工事経歴書」です。

工事経歴書は許可業種ごとに、直前決算期の請負工事に関する「注文者」「元請又は下請の別」「JVの別」「工事名」「工事現場のある都道府県及び市町村名」「配置技術者」「請負代金の額」「工期」を明記し、管轄自治体へ提出する書類です。

この「工事経歴書」、自治体によって記載方法に違いはあるものの、記載方法が明確に定められており、定め通りに正確に記載しなければなりません。

ここでは記載における注意点について説明していきたいと思います。

工事経歴書の具体的な記載方法

記載項目は先のとおり「注文者」「元請又は下請の別」「JVの別」「工事名」「工事現場のある都道府県及び市町村名」「配置技術者」「請負代金の額」「工期」です。

これらの項目を、許可を申請する(※決算変更届の場合は「許可を受けている」「建設工事の種類」ごとに、「完成工事」「未成工事」に分けて記載します。

許可を申請しない(※決算変更届の場合は「許可を受けていない」)建設工事は、「建設工事の種類」を「その他」として別のデータとして記載します。

請負金額が少額であっても、複数の契約を「ほか○件」というように合算して記載することはできません。

一定の期間を通じた基本契約や1件の請負契約で複数の工事を施工する場合は、契約1件に対応する請負金額で記載します。このときの「工事名」の欄は、以下のように記載します。

○○○○(施工場所、施設名)ほか○件□□□□(工事の種類)工事

1件の請負契約を複数の工種に分割して記載することもできません。

附帯工事がある場合など1件の請負契約に複数の工種が含まれている場合は、見積書等を参照し、費用の割合がもっとも大きい工種に対応する「建設工事の種類」に計上します。

尚、土木一式工事と建築一式工事は、その定義上「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物(建築物)を建設する工事」と定義されています。

この点、「総合的な企画、指導、調整」は、基本的には元請が果たすべき役割を示すものであることから考えると、土木一式工事・建築一式工事に計上できるのは、原則として元請として請け負った工事に限られます。

経営事項審査を受けない場合・受ける場合の違い

工事経歴書の記載は「経営事項審査を受ける場合」と「経営事項審査を受けない場合」で記載方法が異なります。

以下に記載方法をまとめました。

※宮城県における工事経歴書記載方式に基づいています。

経営事項審査を受けない場合 経営事項審査を受ける場合
消費税処理方式 税込・税抜どちらでも可

(会計上採用している消費税処理方式で記載する)

税抜
第1段階
記載する工事 元請・下請関係なく請負金額が大きい工事から順に記載する。 請負金額が大きい元請工事から順に記載する。
記載を終了する条件 次のいずれかの条件に当てはまったら記載を終了する。
  • 記載した工事の請負金額の合計が完成工事高の7割を超える
  • 記載件数が20件に到達する
  • 軽微な工事(※)の記載件数が10件に到達する

→税務署で受付が完了している確定申告書一式を提示する

記載した元請工事の請負金額が合計1,000億円を超える次の条件に該当した場合は【第2段階】に進む。

  • 記載した元請工事の請負金額の合計が元請完成工事高の7割を超える
  • 軽微な元請工事(※)の記載件数が10件に到達する

 

経営事項審査を受けない場合 経営事項審査を受ける場合
第2段階
記載する工事 元請・下請関係なく請負金額が大きい工事から順に記載する。

以下のいずれかの条件に当てはまれば記載を終了。

記載を終了する条件
  • 記載した元請工事及び下請工事の請負金額の合計が1,000億円を超える
  • 記載した元請工事及び下請工事の請負金額の合計が完成工事高の7割を超える
  • 軽微な工事(※)以外の元請工事及び下請工事を全て記載した上で、既に記載した元請工事を含む軽微な工事の記載件数が10件に到達する

※ 軽微な工事:建築一式工事においては、請負金額1,500万円未満又は木造住宅で面積150㎡未満のもの、その他の工事においては、請負金額500万円未満のもの。

未成工事の記載について

未成工事に関しては元請工事・下請工事にかかわらず、請負金額の大きい順に記載します。

記載する件数には制限がありません。基本的に主な未成工事を適宜記載していく形になります。

配置技術者氏名は、記載を要しません。

工事経歴書に記載できないもの

工事経歴書に記載するのは、あくまで建設業の営業(建設工事の完成を請け負う営業)に関するものが対象です。

以下の場合は基本的に建設業の営業に該当しませんので、工事経歴書への記載の対象になりません。損益計算書上も、「兼業事業売上高」に計上します。

■測量、設計、地質調査

■ビルなどの清掃業務

■電気設備・消防施設の保守点検業務(その一部と認められる修繕・補修を含む)

■船舶や航空機などの土地に定着しない動産の築造、設備機器取付け

■自社施工

■工事現場で作業に従事する人員の供出(いわゆる人工出し常傭契約応援と呼ばれるもの

■産業廃棄物等の収集、運搬業務

■オペレーターが付かない建設機械のリース

■樹木の剪定、除草、伐根、伐採

■除雪

■道路・河川等の維持管理業務(その一部と認められる修繕・補修を含む)

工事経歴書の記載はしっかりと

いかがでしたでしょうか。

工事経歴書の記載は事実に基づいてしっかり記載しなければなりません。

過去に工事経歴書のきちんと書いておかなかったことが原因で、建設業許可業種の追加に大きく差し支えたというケースも実際にあります。

細心の注意を払って作成する必要があるのが「工事経歴書」なのです。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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