行政書士が解説「主任技術者と監理技術者」

【2024/7/20執筆】

建設業工事を行うに際しては「技術者」に関する理解が不可欠です。

建設工事を適正に施工するためには、実際に施工を行う工事現場に一定の資格や経験を有する技術者を配置し、工事施工状況の管理・監督をする必要があります。建設工事は公共的かつ安全性を求められますから当然と言えば当然ですね。施工する側としても危険を伴いますので何の知識もない人だけで対応できるはずがありません。

この一定の資格や経験を有する資格者が「主任技術者」と「監理技術者」です。

建設業許可における主任技術者

建設業許可業者は、自らが請け負った建設工事を施工する場合に、請負金額の大小、元請であるか下請であるかに関わらず、必ず工事現場に施工上の管理をつかさどる「主任技術者」を配置しなければなりません。

このことは建設業法第26条第1項に明確に定められている法的義務義務です。 誤解しやすい点でもありますが、この場合500万円未満の請負工事であっても施工する建設工事の許可業者であれば、主任技術者の配置が必要です。

主任技術者となれるのは1級、2級資格者、実務経験者です。

建設業許可における監理技術者

建設業許可業者が発注者から直接工事を請け負い(つまり「元請」のことです)、そのうち4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上を他社へ下請契約して施工する場合には、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければなりません。これも建設業法第26条第2項で明確に定められている法的義務です。

監理技術者となれるのは1級資格者等です。主任技術者よりも更に高度な知識と技術を求められるというわけです。

それでは、ここで主任技術者と監理技術者との関係性を具体例で見てみましょう。

例として「土木一式工事(5,000万円)の請負」で考えてみます。

発注者から直接土木一式工事を請け負った元請A社は、現場に監理技術者を配置しなければなりません。

A社はそのうち1部の専門工事(1,000万円)を建設業許可業者B社へ下請けとして出します。(500万円を超えるので下請けとして発注できるのは建設業許可業者です。)

この場合、B社は現場に主任技術者を配置しなければなりません。

ちなみにB社がC社へ2次下請として出す場合も同様です。500万円を超える工事を2次下請けに出す場合は2次下請会社は建設業許可が必要であり、現場に主任技術者を配置しなければなりません。尚、2次下請けの金額が500万円未満の場合は2次下請会社は必ずしも建設業許可は不要であり、その場合は主任技術者の配置義務もありません。

特定専門工事における主任技術者の配置について

2020年の建設業法改正により、一定の条件も下で下請負人が配置すべき主任技術者について、その配置を不要とする改正がなされました。既にお話しした主任技術者制度の一部緩和ですね。それが特定専門工事の一括管理施工制度です。

では特定専門工事についてご説明します。

特定専門工事とは、土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要がある工事をいいます。

現時点では大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうちコンクリートの打設に用いる型枠の組み立てに関する工事と鉄筋工事です。

特定専門工事においては、元請負人が置く主任技術者が、その行うべき職務と併せて当該下請負人の主任技術者が行うべき職務を行うことを、元請負人と当該下請負人が書面により合意した場合に、当該下請負人は主任技術者の配置を要しないこととされました。

また、元請負人が当該工事を施工するための下請契約の請負代金の額(下請契約が2以上あるときは合計額)が3,500万円未満のものが対象となります。

ただし、元請会社の主任技術者は特定専門工事と同一の建設工事に関する1年以上の指導監督的実務経験が必要であり、工事現場に専任で配置されている必要があります。

一定の制限はありますが本制度によって、元請会社にとっては自社施工分を超える工事に対して対応しやすくなり、下請会社にとっては受注の機会を確保しやすくなると言えます。

 主任技術者から監理技術者への変更

建設工事を施工する際してはその施工途上で請負金額が増額・減額となることもあり得ます。

この場合は配置する主任技術者の性質が変わる場合も考えられます。

当初は主任技術者を配置した建設工事において、大幅な工事内容の変更等によって工事途中で下請契約の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となったような場合には、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者(元請)は、それまでの主任技術者に代えて所定の資格を有する監理技術者を配置する必要があります。

この点、工事施工の当初から請負金額の増額変更が予想されている場合には当初から監理技術者になり得る資格を持つ技術者を配置する必要があります。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

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