行政書士が解説「主任・監理技術者の専任性と雇用形態」

【2024/7/20執筆】

建設工事の施行において不可欠な「主任技術者・監理技術者」ですが、ではその雇用形態については何も問われないのでしょうか。

公共の安全性を司る技術者に関しては雇用についても厳格に定められているのか、または人手不足の昨今、臨時雇用や現場限りの契約でも可能なのか、気になるところです。

主任技術者・監理技術者の雇用形態

結論として、建設業許可業者の主任技術者、監理技術者については、工事を請け負った企業との間において「直接かつ恒常的な雇用関係」が必要であるとされています。

「直接かつ恒常的な雇用関係」ですので一般的に考えれば正社員ですね。

そのため以下のような雇用形態では認められません。

  • 直接的な雇用関係を有していない場合(在籍出向者、派遣社員など)
  • 恒常的な雇用関係を有していない場合(一つの工事の期間のみの短期雇用など)

特に国、地方公共団体等が発注する建設工事に関しては発注者から直接請け負う建設業者の専任の監理技術者等については、所属建設業者から入札の申込のあった日(指名競争に付す場合であって入札の申込を伴わないものにあっては入札の執行日、随意契約による場合にあっては見積書の提出のあった日)以前に3カ月以上の雇用関係にあることが必要とされています。

恒常的な雇用関係については、監理技術者資格者証の交付年月日若しくは変更履歴又は健康保険被保険者証の交付年月日等により確認できることができます。

主任技術者・監理技術者の「専任性」

公共性のある施設や工作物、又は多数の者が利用する施設や工作物に関する重要な建設工事で、工事1件の請負代金が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の建設工事については、特に工事の安全かつ適正な施工を確保するために工事現場ごとに「専任の技術者」を配置しなければなりません。(建設業法第26条第3項)

この点、専任の技術者の配置は元請の場合だけでなく下請の場合も必要です。

誤解を受けやすいですが、これは建設業許可の要件のひとつである「専任技術者」とは別の概念ですのでご注意ください。

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事とは?

  • 請負代金の額が3,500万円(建築一式工事は7,000万円)
  • 以上の個人住宅を除くほとんどの工事(いわゆる民間工事も含まれます。)

「工事現場ごとに専任」の意味

工事現場ごとに専任の「専任」とは、他の建設工事現場に関する職務を兼務せず、常時・継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していることを指します。

要するに「現場を兼務できない」ということです。

当然ながら建設業許可で言う「営業所の専任技術者」との兼任もできません。

営業所の専任技術者は工事現場ごとに専任を要する現場の技術者となることはできない、ということです。

「営業所の専任技術者との兼任は不可」「他の工事現場との兼任も不可」ということです。

ここで「営業所の専任技術者」との関係を整理しておきましょう。

営業所の専任技術者は、そもそも現場の主任技術者又は監理技術者になることができません。

何故なら、営業所の専任技術者は建設工事の請負契約締結にあたって技術的なサポート(例えば工法の検討や注文者への技術的知見に基づく説明、最終的な見積等)を行うことがその職務であるため、所属営業所に常勤していることが原則だからです。

例外はあります。

技術者の専任性が求められない工事であって、①当該営業所で契約・締結した建設工事で、②当該営業所が職務を適正に遂行できる程度近接した工事現場で、③当該営業所と常時連絡が取れる状態にあって、④所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある場合に限っては、兼務することができます。

その意味では技術者の専任性を要する建設業工事においては兼務できませんし、遠方の工事現場では兼務できません。

特に「営業所が職務を適正に遂行できる程度近接している」「常時連絡が取れる」については読んで分かるとおり明確な基準が示されていませんので、自己判断せずしっかり確認した上で対応することが必要でしょう。

(著者)行政書士 方波見泰造(ハイフィールド行政書士法人)

行政書士歴10年。建設業許可に関しては新規・更新・各種変更手続きの他、経営事項審査申請のサポートと入札参加資格申請を東北六県、関東で対応中。顧問契約で許認可管理も行っている。行政書士会や建設業者でも建設業許可に関する講演・セミナー実績あり。

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【保有資格】行政書士、宅地建物取引士(登録済)、経営革新等支援機関

経済産業省認定経営革新等支援機関として企業の資金繰をサポートするほか、不動産業(T&K不動産)にて事業用地の仲介も行う。

許認可という企業の生命線をしっかり管理しながら、資金繰りと事業用地という経営の土台も支える行政書士として日々研鑽を行う。

 

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